定年退職時の再雇用で発生する同日得喪とは

もうすぐ60歳で定年退職する社員がいます。
その後再雇用をする予定なのですが、その場合「同日得喪」という手続きがあると聞きました。
どのような手続きか教えてください。

■特例の「同日得喪」手続の効果

同日得喪手続きを行うと、再雇用された社員の保険料が「再雇用時の報酬」に見合った金額に修正されます。

一般的には多くの場合、再雇用後は報酬水準が大きく下がっています。

それにもかかわらず手続きを行わないと、定年前の報酬を基準にした保険料の負担が必要となってしまいます。
以下に解説を読んで必要があればぜひ活用していただきたい制度です。

 

原則通りの手続きに従うと社会保険料(健康保険料および厚生年金保険料)等の算定の基礎となる標準報酬月額の「随時改定」の手続を行うことになります。

 

随時改定は、次の3つの条件を全て満たす場合に行うことになります。

(1)昇給または降給等により固定的賃金※に変動があった。

(2)変動月からの3カ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。

(3)3カ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。

 

上記(1)~(3)すべての要件を満たした場合、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4カ月目(例:4月に支払われる給与に変動があった場合、7月)の標準報酬月額から改定されます。

 

※固定的賃金とは、給与支給項目のうち文字通り毎月決まった額が支給されるものをいいます。
基本給や役職手当、住宅手当等が該当します。
再雇用時には基本給のダウンが生じることになりますから、まさに随時改定の対象となります。

 

上記(2)に従いますと、例えば4月に再雇用された場合、随時改定により標準報酬月額が減額改定されるのが7月となり、
それまでの間は従前の標準報酬月額による高額の社会保険料が控除されることになります。

 

報酬水準が下がった中で高い保険料が控除されるのは社員にとっても厳しいことになります。
そこで、ご質問のケースの場合には特例として「同日得喪」の手続が取れることとなっており、再雇用開始月から標準報酬月額を減額改定できることになっています。

 

■同日得喪の手続

事業主が該当する方の厚生年金保険等の被保険者資格喪失届および被保険者資格取得届を同時に年金事務所(事務センター)へ提出していただくことにより、再雇用された月から再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に決定することができます。
なお、資格喪失日および資格取得日は同じ日となります。

 

例えば、3月31日定年退職、4月1日付再雇用であれば、4月1日が資格喪失日かつ資格取得日になります。

 

なお、その際に添付書類として、以下の2つの書類が必要です。

①     就業規則や退職辞令の写し等の退職したことがわかる書類

②     継続して再雇用されたことが客観的に判断できる書類(雇用契約書、労働条件通知書等)または「事業主の証明」が必要になります。

 

また、事業主の証明は、特に様式は指定しませんが、退職された日、再雇用された日が記載されているものが必要となります。

 

厚生年金基金及び健康保険組合に加入している事業所の場合は、当該基金、健康保険組合※にも同様の届出が必要ですのでご注意ください。(手続の詳細については、当該基金、健康保険組合へお問い合わせください。)

 

継続して再雇用とは、1日も空くことなく同じ会社に再雇用されることをいいます。

 

事業所の定年制の定めの有無による相違はありません。60歳以後に退職した後、継続して再雇用された場合であれば対象となります。

 

この取扱いについては、正社員の方に限定されるものではなく、厚生年金保険等の被保険者に対する取扱いとなりますので、パートタイマーやアルバイトなどで厚生年金保険等の被保険者となっている方も対象となります。

 

法人の役員等が対象の場合の添付書類は、
「役員規定、取締役会の議事録などの役員を退任したことがわかる書類および退任後継続して嘱託社員として再雇用されたことがわかる雇用契約書」
または「事業主の証明」になります。

 

なお、この手続に伴って、再雇用前の被保険者資格を喪失するため、健康保険証は被扶養者分も含めて資格喪失届に添付して返却します。

新たな被保険者資格取得に伴い、健康保険証も新たに交付されます。
被扶養者がいる場合は手続き時に被扶養者(異動)届も提出し、再度扶養認定を受ける必要があります。

ただし、健康保険組合※に加入の場合には健康保険証の返却や被扶養者(異動)届の提出を求められない場合がありますので、各健康保険組合にお尋ねください。

 

特例の同日得喪の手続によらず、原則通りの随時改定の届出によることも可能ですが、保険料の減額改定のタイミングを考慮すると同日得喪による手続が有効と考えられます。

手続に不安がある場合には、ぜひ当法人ご相談ください。

 

お気軽にお問い合わせください。

 

参照元:https://www.nenkin.go.jp/faq/kounen/kounenseido/shokutakusaikoyo/20140911.html

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